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NEC、コネクテッドカーなどの高度な制御を可能とする、AIによるマルチパス通信の最適化技術を開発

 日本電気株式会社(NEC)は6月9日、コネクテッドカーや鉄道、ドローンなどの移動体に安定した通信を提供する、モビリティに適したAIによるマルチパス通信の最適化技術を開発したと発表した。

 マルチパス通信とは、複数の異なる通信回線、ここではモバイルネットワーク(4G/5G)、Wi-Fi、衛星通信などを同時に活用し、1つの通信回路として利用する通信方式のこと。モビリティ市場では、コネクテッド化、安全運転支援システムの高度化、自動運転の実用化が進む中で、安心・安全を確保するためにアプリケーションごとに高い信頼性を保てるモバイル通信環境を維持できることが重要になる。しかし、常に周囲の環境の状態が変化し続けるモビリティサービスでは、マルチパス通信の最適解を予測することが困難で、遠隔監視や車両制御など複数のアプリケーションにおける全ての品質で高い信頼性を保つには不確定要素が多く、課題があったという。

 本技術は、移動や輻輳によって時系列的に大きく変動する帯域を高精度に予測し、複数の車外通信を融合して車の通信要件に応じて最適に再分配することで、限られた帯域でも多様なサービスを効率的に収容しつつ、通信品質を確保することが可能だとしている。

コンセプト
構成

 本技術の特長として、3つの内容が挙げられている。

 1点目は「高品質と高効率を両立するリアルタイムな経路選択」。本技術の中心となる内容で、応答性能、QoE(Quality of Experience)、コスト、周辺環境の4つの要素に基づく経路選択技術、および、時系列変動を考慮した高精度QoE予測技術(体感する通信品質が最適になる通信経路の予測技術)により、高品質な通信を維持しつつ、収容効率を最大化するリアルタイムで切れ目のない通信を実現するという。

 2点目は「マルチアプリケーション、マルチパス通信に対応した通信制御」。アプリケーションごとの特性と、回線特性に合わせた制御により、マルチアプリケーションを同時に利用した場合でもマルチパス通信の経路切り替えやハンドオーバー(通信を継続させるために接続している基地局を切り替えること)時の影響を最小限に抑えることが可能になる。

 3点目は「場所・時間・移動状況の膨大な組み合わせにおける最適解導出」。各エリアで収集した通信品質情報を基に、時系列変動を考慮した高精度QoE予測技術により、回線ごとのQoEを抽象化し、品質とコストを最適化する回線の組み合わせを導出することが可能となる。これにより、モビリティ基盤側で、移動経路・環境条件・使用アプリケーションに合わせた経路選択が算出でき、RSP(Remote SIM Provisioning)などの技術と組み合わせることにより、エリアごとに最適な通信環境を構築できるようになる。

 同社は本技術を用いたソリューションの開発を進め、2025年度内に実用化することを目指すとしている。本技術は、6月11日~6月13日に幕張メッセで開催される「Interop Tokyo 2025」で展示予定となっている。